DIYでリフォームをやって知識が付いてくると施行されているモノに謎というか疑問の様なものも生まれて来ることがあります。
今回は今後の施行を考える上で以前から我が家の疑問だった構造、何故そうなっているのかを悩み、考え、考察した事をまとめています。
【謎1】すっぽり横架材がない場所がある
リビングが大体形になってきて以前から気になっていたのがこの天井の端です。

ここはスッカラカン
ここには横架材が何も無いんです。

何で?
梁の補強する?触らない方が賢明?
寝転んで真下から見ると空洞はこんな感じでスッカラカンです。

何故なのか?これでいいのか?
補強を入れた方がいいのか、触らない方がいいのだろうか。
思い付きで迂闊に補強してしまうのは愚かな行為。
補強の是非は全体を見てよくよく考えて行わなければ。
果たしてこの構造はスタンダードなのか?
何故横架材が無いのか、コレが建築界における至高の完成系なのか?
物凄くネットで構造図面や写真を漁りましたが殆ど空洞では無く等間隔で梁が入っており、同じような構造の物件はありませんでした。
「殆ど」と申し上げたのは、空洞設計の図面を確認できたわけではなく何だかよく分からない図面はあったけどネット上で当該物件のような構造の存在を確認できなかった」という個人的な見解を踏まえた成果です。
今更ながらこの構造は特異なのではと疑いを持ちました。
先ずは現状把握
以下は1階の梁と桁の構造を平面図にしたものです。
図面下部の矢印部分が上記に申し上げた空洞です。

全体で見ると大梁がT字に組まれて、建物中央辺りには押入れや風呂場と間取りの関係もあってか比較的多めの横架材で組まれているといった感じでしょうか。
で、空洞の理由は?
更に2階の根太を追加するとこんな感じです。
空洞は玄関側にもあります。
なお、隣のダイニングキッチン上は根太はありますが横架材自体はなく、端部にはリビングより大きな空洞があります。
何で?

屋根だから?

本当にそうなの?屋根があれば横架材って抜いていいのか?
そんな図面見当たらなかったのだが探し方が悪かった?
いや、そもそも2階がなく屋根になってるからといっても水平応力に対して強いというわけでも無い気がするんですが…うーん分からん。
ところでこの家・・・
【謎2】火打ちが少なすぎやしないかい?
ここで第2の疑問(謎)です。
玄関側と中央にある部屋の外側には火打ちがありますがそれ以外にはありません。

少なくね?偏ってね?
つか、何でこっちだけ無いの?
盗まれた?
だが、火打ちを入れようとした形跡はある
火打ちは無いけど、ダイニングキッチンの4箇所に火打ち梁を入れようと欠き込みした跡があります。

どうやらここも火打ちを入れる対象だったと思われます。
やはり盗まれたのか?いや、そんな事は無い筈。
【謎3】基礎が無いだとぉ?
じゃぁ、空洞の件と何故火打ちが無いのかも含めてもう少し構造の視野を広げて考えてみます。
以下が無筋コンクリート基礎またはブロック基礎で構成された築50年我が家の基礎平面図です。
※開口部(人通口)は無視しています

これに1階の梁・桁を合わせるとこうなります。
何ということでしょう!!外壁に面するダイニングキッチンの端には基礎がありません。

これが3つ目の疑問(謎)です。
室内から見た基礎が無い現場
これがダイニングキッチンの床を解体したときに現れた基礎と建物が揃っていないキッチンの端部です。

父が冬季ダイニングキッチンだけ物凄く寒かったと言っていた理由がここにありました。
外から見た基礎が無い現場
外から見るとこんな感じです。
※このブロックは置いてあるだけで基礎とは無関係です
周りの家も同じ時期に建っていますがこの仕様は我が家だけですw

なお、ブロック塀は建物に対して平行ではなく斜めになっており三角形の裏庭を形作っています。

幼少の頃から見てるこの光景に違和感は無かったのですが今更DIYを始めて気付く建築的な違和感でした。
そりゃ寒いわ。
【謎4】何故梁の寸法がこんなに違うのか
何故この様な建て方になっているのか
1階だけでなく更に家全体にまで視野を広げてみます。
2階を支える骨組み
我が家の形はこうなっています。
1階の建物より小さな2階が載っていて屋根は切妻屋根。

昭和の家によくあるタイプです。
2階が載っている位置
平面図で示すと赤点線の位置が2階です。
居室とベランダとの境には大梁が架かっていて直交するもう1本の大梁は2階の荷重を端部で支えています。
なるほど!ちゃんと考えられているのが分かります。

ちなみにベランダは1階の外壁よりオーバーハングして(外に迫り出して)います。
ベランダの面積を増やして貰っているこの工法はありがたいです。

梁の寸法差
で、4つ目の疑問(謎)なんですが
2階短手両辺の荷重を支える梁の寸法に違いがあります。
コレが1階ダイニングキッチン側で2階の荷重を受けている幅105mm梁せい230mm大梁です。
※水のシミがありますが現在この問題点(雨漏り)は解消されています

方や対辺の梁せいは105mm、玄関側は普通(周りと同じ寸法)の梁です。

ダイニングキッチンおよびリビング側一方だけ梁せい230mmの大梁なのです。何故?
また謎が。
4つの謎を考察
現時点で4つの気になる謎
- 横架材無き空洞の存在
- 在るべき位置に火打ち梁が無い箇所がある
- 建物の下に基礎が無い箇所がある
- 2階を支える直下の梁せいが場所によって違う
この謎を解いていきたいと思います。
基礎が無いから下手に剛性を持たせられなかった?
何故一方だけ大梁なのか?(謎4)
ダイニングキッチンの端部に基礎が無い事(謎3)が関係しているのか?
横架材が無く空洞(謎1)なのは、わざと抜いて硬くしていない(柔らかく)ようにも感じられます。

その線で考えると一方だけ大梁なのはダイニングキッチン端部に基礎が無いので横架材があると地震発生時、端部で揺れを吸収できないから基礎がある手前に大梁を架け、止めよう(受け流そう?)としたのか?
双方には圧倒的な差があった
という仮説が最初は有力かと思ってたんですが撮った写真をよく見て現状を確認すると
大梁ではない方(玄関側)は柱の本数が5本で基礎が2階の荷重をおよそ面で支えているのに対して、大梁になっている方(LDK側)は部屋の間走っていて柱の本数が半分の3本、基礎は大梁と直行していて点で支える構造になっていました。

なので梁せいがおよそ倍の230mmを架けて、これで同等という考え方をされているのではないかと。
基礎が無いのって法律が関係しているのでは?
ひょっとして基礎が無いのは法律が関係しているのではないかと考えました。
調べてみると法律では家を建てる際、基本的に建物は隣接する境界から50cm以上離して建てないといけないらしい。
民法第234条
(境界線付近の建築の制限)
- 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
- 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
民法第234条 - Wikibooks
オイオイ・・この狭いところ、234条1項アウトじゃんか。

これは違法建築か?
この裏庭は建物に対して境界は平行ではなく三角形になっています。
民法第234条1項によると建物は境界線から50センチメートル空けなければならないようですのでこの項目だけ解釈すれば法令違反です。

これは外壁補修時のものですが、上記の逆から見た写真。

三角形の最も狭い場所で境界から贔屓目に見ても30センチ弱くらいしかありません。
法令違反を避けるため基礎をセットバックした?
元々基礎があった所から境界までは50センチメートル以上空いています。
法令違反を避けるため基礎をセットバックしたのか?
脱法行為的な?

基礎が無い理由ははこれなのか?
空中セーフしてくれないのでは?
上述の民法234条1項に
「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。」
と、あるように基礎ではなく建物を基準にしているので基礎が有ろうが無かろうが境界から建物までは50センチメートル以上の距離は保たれていません。
よってこれでは法令違反の回避にはなっていないと思われます。
民法234条はそんなに冷酷な法律ではない
民法234条1項はあくまで原則で234条2項で50センチメートル以下であっても建てる事が出来る条件が以下のように定められています。
「前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。」
つまり境界から隣に50センチメートル以下で建てようとしたらお隣は
- 建築中なら止めたり変更させる権利がある
- 建築開始から1年以降は損害賠償請求が発生
という事な様です。
逆に言えば。
- 建築後は変更させる権利がない
- 賠償請求権は建築開始から1年以降
という事になるかと。
街を見渡すと建物どうしが明らかに50センチ空いてない物件なんてメチャクチャあります。
何なら家どうし10センチ空いてないのもあります。
つまり民法では50センチ空いていない家どうし双方が合意していればいいというのが原則。
で、足りない部分を補う権利も明記しているわけですね。
【推測】基礎が建物よりセットバックした経緯
建築当時の作業分担は不明ですが、例えば整地や基礎工事と建物の建築が別だったなら
- 基礎屋さん境界に気づく
- 境界から50センチメートル以上空けて基礎を(協議しないで?)打設
- (事前連絡受けず?)大工さんが建てていくと基礎が合わないオーマイガー
- 急遽構造を変更し対応
火打ちの跡は棟上げ前に予め掘ってしまっていたので残ってしまったとかかも知れません。
我が家は境界先より随分前に建っていた
当該面の境界先は元々田畑でした。
それが当方が5歳くらいのとき、ある大きな会社の寮が建設され我が家の柵の向こう側はテニスコートや庭になりました。
それが最近になって建物が取り壊され整地され再び境界の協議が持たれ新たな施設が建てられ同様に庭となりました。
つまり今も昔も我が家のがパイセンなので後から建てる方に異議を唱えられる事が無かった様です。
だって先に建ってしまっているからねっ
基礎屋さんは(居たのなら)杞憂だったけど責任は果たした。
幸にも境界先には同時進行で建物は建築されなかったので問題は出ず大工さんは構造変更は出たが当初通りの間取りで建ててくれた。
という事なんでしょうか。
4つの謎を解く
結論:法律の影響から来るもの
要約すると以下
- 法律のせいで基礎をセットバックしたが予定通りの間取りで建築決行、結果的にセーフ
- だが基礎のない部分に強度を持たせられず火打ち梁撤去、梁も無しになり空洞ができる
- 間取りの関係で片方が大梁だが、結果的に横揺れを大梁で幾分か吸収(負担)させる構造になった
となるのではないかと。
次回へ続く。